起訴から判決

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起訴から判決について

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  • 公判請求(正式裁判) 公判において弁護活動=証人尋問、弁護側証拠請求等
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  • 判決
  • 略式命令請求
  • 略式命令(罰金)

起訴から判決の詳細について

ここでは、公判請求(起訴)から判決までの流れをご説明いたします。 分かりやすいように、傷害罪で起訴されたという架空の事例を元にご説明していきます。

<事例>
川上拓男(45歳、仮名です。以下すべて仮名)さんが、2012年10月1日の午後9時頃、さいたま市内の居酒屋で隣の席にいた佐々木正幸さん(60歳)の顔面を拳で殴り、鼻骨骨折等全治1か月の傷害を負わせたという事例です。
酔っ払った佐々木さんにしつこくからまれたため、カッときて殴ってしまったのです。
川上さんは、2010年にも同様の傷害事件を起こし罰金50万円となった前科があります。
なお川上さんは会社員で、妻も子ども(5歳)もいます。

逮捕から起訴に至る経過

※ここでは起訴後の説明が主ですので、起訴に至るまでの弁護活動については簡略化して記載しております。

川上さんは、110番通報により駆けつけた警察官に求められ、近くの警察署まで任意同行しました。
そして警察署で取調べを受けました。
川上さんは殴ったこと自体は認めているものの、酒に酔っていたこともあり、けんかになるまでの事情について「あいつが悪いんだ」と繰り返すばかりでした。
そこで警察は逮捕状を取り、翌10月2日午前1時、川上さんを傷害の疑いで通常逮捕しました。

10月3日、川上さんはさいたま地方検察庁に送致されました。
同日、検察官は勾留請求し、さいたま地方裁判所の裁判官は川上さんを勾留する決定をしました。

10月5日、甲野弁護士が私選弁護人となりました。
酔いがさめて頭を冷やした川上さんは、佐々木さんに暴力を振るってケガをさせてしまったことを後悔していました。
川上さんの場合は同種の前科があり、公判請求(起訴)となる可能性が高いことを説明しました。
そして本件では被害者と示談できることが重要であることを説明しました。
川上さんは50万円は何とか用意できるとのことでしたので、それを被害弁償にあてることにしました。
甲野弁護士は謝罪文を書くこともすすめました。

甲野弁護士は検察官を通じて、示談交渉のために被害者である佐々木さんの連絡先を教えてくれるよう頼みましたが、佐々木さんは被害の気持ちが強く、連絡先を教えてくれるどころか謝罪文も受け取るつもりはないとのことでした。

甲野弁護士は、被害者宛の謝罪文、家族の陳述書、釈放後も解雇しないで働いてもらうという内容の勤務先社長の陳述書等を添付して川上さんを罰金にするよう検察官に申し入れました。

しかし示談ができていないこと、前回の罰金刑から2年しか経過していないことを重くみた検察官は公判請求することを決めてしまいました。

起訴

川上さんは、10月22日、傷害罪でさいたま地方裁判所に起訴されました。

起訴状は以下のとおりです。

公訴事実
被告人は、平成24年10月1日午後9時頃、さいたま市○○区○○1丁目2番3号△△店舗内において、隣席にいた佐々木正幸にからまれたことに腹を立て、同人に対し、手拳でその顔面を殴打する暴行を加え、もって同人に加療約1か月を要する鼻骨骨折の傷害を負わせたものである。

罪名および罰条
傷害 刑法第204条

〔トピックス〕起訴状
起訴状とは、簡単にご説明しますと、検察官が主張する被告人の犯罪行為を記載したものです。
刑事裁判では主に、起訴状に書かれた公訴事実について審理を行います。
なお裁判所は、第1回の公判までは原則として起訴状しか見ていません。
刑事裁判では、被告人や目撃者の供述調書や診断書などの証拠調べを行いますが、裁判所は第1回以降の公判期日で検察官から提出されて初めて証拠を目にすることになります。
これは証拠書面などを事前に見ることで、裁判官が被告人や事件を色眼鏡で見てしまうことを防ぐために法律で定められています(起訴状一本主義といいます)。

保釈

起訴となる可能性が高かったので、甲野弁護士は起訴前から保釈の準備をしていました。
妻の一子さんに事務所へ来てもらい、釈放後の監督を誓う身元引受書と、川上さんがいないことで家計が困窮していることや5歳の子どもが毎日泣いて悲しんでいることなどを陳述書にまとめていました。
また勤務先の社長にも、保釈となった場合は職場復帰させるという内容の陳述書を作成してもらいました。

なお保釈金は、保釈金を立て替えてくれる団体から用立てることにしました。
(※保釈金を立て替えてくれる団体があります。一定の手数料がかかり、賛否両論ありますが、保釈金を準備できない方にとっては便利な制度です。当事務所でも保釈金の立て替えを使って保釈となった事例が多数ありますのでご相談下さい)

甲野弁護士は、起訴翌日の午後1時、これらの書面を添付して、さいたま地方裁判所に保釈請求書を提出しました。
その上で、保釈の判断をする裁判官との面接を申し入れました。

午後3時になって担当の裁判官から甲野弁護士の携帯に電話が入り、午後4時であれば面会できるとのことでした。
午後4時、甲野弁護士は担当裁判官と面会し、保釈請求書を補足しながら、裁判官を説得しました。

裁判官は、被害者と示談できていないことから保釈は難しいと考えていたようでしたが、甲野弁護士が強く説得し、保釈金200万円で保釈を許可しました。

とくに、保釈となって釈放された場合、川上さんは職場復帰するのであり逃亡したりしないこと、被害者に対して脅迫したり嫌がらせをしたりする可能性はないことを力を込めて話しました。

甲野弁護士は用意していた保釈金を裁判所の会計窓口に持参し、午後7時になって無事川上さんは釈放されました。

保釈された翌日、川上さんは職場に復帰しました。

〔トピックス〕保釈とは
保釈とは、一定金額の保証金を納めることを条件として、勾留されている被告人を釈放することをいいます。
「被告人」が対象ですので、勾留されていても起訴前の段階では保釈になりません。
保釈保証金は、150万円以上のことが多いようです。
保釈保証金は被告人が逃亡してしまうことを防止するために納めさせるものですから、保釈保証金の額は被告人の経済状況によって大きく変わってきます。
有名な例では、ホリエモンこと堀江貴文さんの保釈保証金は3億円(その後6億円まで増額)でした。
裁判所に納めた保釈保証金は、裁判が終わったら全額戻ってきます。
保釈には、三つの種類があります。
権利保釈、裁量保釈、職権保釈です。
(1)権利保釈(義務的保釈)
権利保釈が原則です。
以下の6点のどれにもあたらない場合は、当然の権利として保釈が認められ、裁判所は保釈を認めなければなりません。
(a)今回の事件が一定の重大犯罪(死刑、無期、短期1年以上の懲役・禁錮にあたる罪)である場合
(b)一定の重大犯罪(死刑、無期、長期10年を超える懲役・禁錮にあたる罪)の前科がある場合
(c)常習犯である場合
(d)証拠隠滅をすると疑うに足りる相当の理由がある場合
(e)被害者や目撃者など、一定の者を脅したりすると疑うに足りる相当の理由がある場合
(f)被告人の氏名又は住居が分からない場合
権利保釈が原則なのですが、実際は骨抜きにされてしまっています。
裁判所が、(d)の証拠隠滅をすると疑うに足りる相当の理由を簡単に認めてしまうからです。
したがって、実際には次に説明する裁量保釈にあたるかどうかが非常に重要です。
(2)裁量保釈
裁量保釈とは、上記の6点のいずれかにあたる場合でも、さまざまな事情を考慮して保釈が相当であると裁判所が判断した場合に認められるものです。
事情としては、事件の性質、犯行の状況、犯行までの事情、被告人の性格や経歴、家族関係、職場関係などが考慮されます。
川上さんの場合は、しつこくからまれたためカッとして殴ってしまったという偶発的な犯行であること、罰金刑の前科しかないことから執行猶予が見込まれること、家族の監督が期待できること、幼い子どもが父の帰りを待っていること、職場復帰が可能であることなどが考慮されました。
(3)職権保釈
職権保釈とは、勾留による身体拘束が不当に長くなった場合に、裁判所が自らの判断で認める保釈のことをいいます。
いずれの種類の保釈でも、保釈となった場合には、裁判所からの出頭命令には必ず応じることといった条件が付けられます(そのほかにも住居制限などの条件がつけられる場合もあります)。
もし保釈中に被告人が条件に違反して逃亡したり証拠の隠滅をした場合には、保釈は取り消され、保証金の全部または一部が没収されてしまいます。

示談交渉

甲野弁護士は起訴後も検察官を通じて、被害者の連絡先を教えてくれるよう頼んでいました。
10月25日になって、事件から日がたち気持ちもやわらいだのか、佐々木さんが連絡先を教えてくれました。
甲野弁護士は佐々木さんに電話をかけ、川上さんからの謝罪の意を伝えた上で、会う約束を取り付けました。

翌26日、甲野弁護士はファミリーレストランで佐々木さんと会いました。
あらためて謝罪の意を伝え、謝罪文を手渡し、被害弁償金50万円を受け取ってくれるよう申し入れました。
佐々木さんはその場で謝罪文を読んでくれました。
川上さんの気持ちが伝わった様子で、佐々木さんは被害弁償を受け取り、示談すると言ってくれました。

甲野弁護士は現金50万円を佐々木さんに手渡し、領収書と示談書に署名押印をしてもらいました。
示談書には、川上さんを許すという文言も入れてもらうことができました。

以上の経過をまとめた示談状況の報告書を作成し、示談書、領収書とともに裁判で証拠として提出することにしました。

公判

(1)刑事裁判第1回公判期日の流れ

冒頭手続

・人定質問
裁判長が被告人に氏名、本籍、住所、年齢、職業などを聞いて、人違いでないか確認します。

・起訴状朗読
検察官が起訴状を朗読して、裁判の対象を明らかにします。

・黙秘権告知・陳述の機会の付与
裁判長が被告人に黙秘権の告知をします。
その上で、起訴状の公訴事実に対する被告人・弁護人の意見を聞きます。
事実に争いがない場合は「間違いありません」などと答え、
事実に争いがある場合は「事実と異なります。私は犯人ではありません」などと答えます。

冒頭陳述

検察官が証拠によって立証しようとする事実(検察官からみたストーリー)を物語形式で述べます。
通常は、被告人の身上・経歴、犯行に至る経緯、犯行の状況、情状などを述べます。

検察官による立証(証拠請求)

通常、検察官は供述調書や実況見分調書などの書面を証拠請求してきます。
これに対して弁護人が同意か不同意の意見を述べます。

供述調書などの書面は、被告人・弁護人の同意がなければ証拠とすることができないのが原則です。
同意がない場合、書面を証拠とすることはできず、検察官は証人尋問を請求します。

証人尋問を行う必要がないと弁護人が判断した場合は、同意して書面の取調べで済ませます。
同意した証拠は検察官が要旨を述べます。

〔トピックス〕証人尋問
犯人ではないとして争っている事件で、検察官が目撃者の証人尋問を請求した場合を例に説明します。
証人は、嘘をつかないという宣誓をした上で、法廷の中央にある証人席に座ります。
そして、証人尋問を請求した検察官が主尋問を行います。
証人尋問には細かいルールがたくさん定められていますが、基本的には一問一答形式で、尋問者の質問に答えるという形式で行います。
主尋問では、証人が目撃したのは被告人であることなどを質問によって引き出します。
次に弁護人が反対尋問を行います。
反対尋問では、証人が見間違いをしたのではないか、嘘をついているのではないかなどを様々な角度から質問していきます。
証人は被告人が犯人であると主尋問で述べているわけですから、「あなたが見たのは別人ではないですか?」とか「嘘をついているのではないですか?」などと質問しても「はい」と答えるわけがありません。
そこで弁護人としては、現場が暗かったこと、証人の立ち位置からは犯人がよく見えなかったこと、事件当時の取調べでは犯人をよく見ていなかったと述べていたことなどを引き出すよう尋問します。
最後に裁判官から補充的に尋問を行います。
弁護人の立証
事実に争いがない事件では、弁護人が量刑上有利な証拠を請求します。
たとえば、家族などの情状証人の尋問と被告人質問を請求します。
否認事件では、たとえばアリバイを証明してくれる証人の尋問を請求します。
検察官の論告・求刑
これまで取り調べた証拠をもとに、検察官が事件に対する意見を述べます。
また通常は、最後に求刑として量刑についての意見を述べます。
たとえば、「被告人を懲役2年に処するのを相当であると思料します」などと述べて求刑します。
弁護士の弁論
弁護人が、事件に対する意見を述べます。
被告人の意見陳述
被告人が、最後に自分の意見を述べます。
事実に争いがない事件では、現在の心境や被害者に対する気持ちなどを述べます。
弁論終結
ここまでで実質的な審理は終わりです。
後は判決を待つのみです。
なお事実に争いがない事件の場合は、第1回公判期日でここまで終わらせてしまうことが多いです。
判決宣告
結審後、2週間から1か月くらい先に判決の期日が指定されます。
判決では、被告人に対する刑が言い渡されます。
無罪を争っているなど事実に争いがある事件の場合は、判決の作成に時間がかかるため、1か月以上先になってしまうこともあります。

(2)具体例――川上さんの事例

事前の準備・打合せ

保釈後、甲野弁護士と川上さんは直接会って、数回打合せをしています。
検察官からは、証拠として請求する予定の書面の開示を受けていましたので、その書面を見ながら打合せをしました。
このように直接会って打合せをすることができるのは、保釈の大きなメリットです。
警察署でアクリル板越しに打合せをするだけでは、どうしても限界があるからです。

川上さんの供述調書には、「頭にきたので、被害者の顔面を拳で殴ったのです」という部分がありました。
川上さんは甲野弁護士に、たしかに結果的には顔面を殴ってしまったが、とくに顔面を狙ったわけではなく、真横にいる被害者の方をよく見ずに拳を突き出したところたまたま鼻にあたってしまったと説明しました。

検察官がこの点を強調してきた場合は、被告人質問で説明してもらうことにしました。

第1回公判期日

2012年11月20日午前10時、川上さんの第1回公判期日が始まりました。 川上さんはスーツ姿で法廷のベンチに座っています。

冒頭手続
人定質問、起訴状朗読、黙秘権告知・陳述の機会の付与までが終わりました。

冒頭陳述
検察官は、以下の内容の冒頭陳述をしました。

  • ・川上さんがさいたま市内で生まれ育ち、市内の高校を卒業した
  • ・その後、電気工事関係の会社に数か所勤務し、2年前から現在の勤務先で働いている
  • ・現在は妻と子どもの3人で暮らしている
  • ・2年前に傷害の罰金前科がある
  • ・本件当日は、仕事をしていたときに現場の工事監督からささいなことで怒鳴られたためむしゃくしゃした気分で酒を飲んでいたところ、隣にいた被害者にからまれたため頭にきて、うさを晴らすつもりで顔面を狙って殴った
  • ・その結果、被害者は鼻骨骨折の大けがをした

やはり、検察官は「顔面を狙って殴った」と主張してきました。
これについては被告人質問で殴ってしまった際の状況を説明してもらいます。

検察官による証拠請求・証拠調べ
検察官は、現場の実況見分調書、医師の診断書、被害者の供述調書、被告人の供述調書等を証拠請求してきました。

弁護人は、すべて同意しました。
川上さんの供述調書の中の「顔面を殴った」という記載は、ニュアンスの問題はありますが、顔面を殴ってしまったこと自体は事実ですので、ここでは同意することにしました。

検察官は、請求した証拠の要点をかいつまんで述べ、裁判所に提出しました。

なおここまでで、約10分が経過しています。

弁護人による証拠請求・証拠調べ
甲野弁護士は、被害者との示談書、被害弁償金の領収書、勤務先社長の陳述書を証拠として請求しました。
また妻の一子さんの証人尋問も請求しました。

検察官はすべて同意しました。

甲野弁護士が書面の内容を説明し、裁判所に提出しました。

そして一子さんの証人尋問が始まります。

甲野弁護士は一子さんに、川上さんも一子さんも被害者に対して申し訳ないと思っていること、同じようなことを繰り返さないためにはどうしたらよいか何度も話し合ったこと、今後職場で嫌なことがあったときなどは夫婦で話し合って気持ちの整理をするようにすることなどを話してもらいました。

検察官は反対尋問で、前に罰金刑を受けた後に同じような話し合いをしなかったのかなどと質問しましたが、一子さんは、その時は本人も反省していたのでまた繰り返すとは思わなかった、甘く考えていた、これからは違うと誠実に答えました。

裁判官からの補充尋問はありませんでした。

被告人質問
甲野弁護士は川上さんに、被害者に対して申し訳ない気持ちであること、今後二度と暴力事件は起こさないことなどを話してもらいました。
そして、あえて被害者の顔面を狙ったわけではないこと、ケガをさせるつもりはなかったことなどを説明してもらいました。

検察官は反対質問で、イライラしていたから八つ当たりをして顔面を狙ったのではないかと聞きましたが、川上さんは、イライラして殴ってしまったのは事実で言い逃れをするつもりはないが、被害者の方を見ないで拳を突き出したこと、そうしたら思わず鼻にあたってしまったことなどを説明しました。

裁判官は、殴った際の川上さんの体の向き、顔の向きなどを確認する質問をしました。

論告・求刑
検察官は、犯罪の成立については証明十分であると述べた上で、川上さんの情状について、犯行の動機が八つ当たりという身勝手なものであること、示談はできているものの被害者は鼻骨骨折という大けがをしていること、同種の前科があることなどを述べました。
そして懲役1年4月を求刑しました。

弁論
甲野弁護士は、示談が済んでおり被害者は川上さんを許すと言っていること、川上さんは今後同じことを繰り返さないためにどうすればよいか真剣に考えていること、それを助ける家族がいること、職場も事情を理解した上で川上さんを受け入れてくれていることなどを述べました。
その上で、川上さんは執行猶予にすべきであると主張しました。

〔トピックス〕執行猶予
執行猶予とは、有罪判決の刑の執行を一定期間猶予する制度です。
前科がないなど、情状が比較的良い場合で、現実に刑を執行する必要性がそれほど大きくないと裁判所が考える場合に、執行猶予がつけられます。
執行猶予がつくと、執行猶予の期間中に新たに犯罪を犯して禁固・懲役の判決を受けることがなければ、刑の言い渡しは効力を失い、刑を受ける必要がなくなります。
逆に、執行猶予中に新たに犯罪を犯して禁固・懲役の判決を受けてしまうと、原則として執行猶予が取り消され、前に受けた刑と新たに受けた刑とを合算した期間、刑を受けなければならなくなります。
例)①2012年10月1日に懲役1年6月執行猶予3年の判決を受け、②2014年5月1日に懲役1年の判決を受けた場合、1年6月と1年を合算した2年6月の刑を受けることになります。
これに対して、2回目の刑が罰金で済んだ場合は、執行猶予は取り消されません。

被告人の意見陳述
裁判官が川上さんに「証言台の前に立ってください」と言いました。
そして「何か最後に言っておきたいことがあれば言ってください」と言いました。

川上さんは、被害者に対して大変申し訳ないことをしたこと、家族や勤務先にも迷惑をかけたこと、今後二度と同じようなことは繰り返さないことを自分の言葉で述べました。

弁論終結(結審)
これで弁論が終結しました。
裁判官は、判決期日を2週間後の12月4日午後2時に指定しました。

第1回公判期日は、約50分で終わりました。

判決宣告
時間通りに裁判官が法廷に入り、開廷しました。
裁判官は川上さんを証言台の前に呼び、氏名等の確認をしました。
そして、「これから判決を言い渡しますので、よく聞いていて下さい」と言いました。

裁判官は、「主文 被告人を懲役1年4月に処する。この裁判確定の日から3年間、その刑の執行を猶予する。」と主文を読み上げた後、「これから量刑の理由を説明します」と言いました。

裁判官は、川上さんに不利な事情として、被害者が重傷を負ったこと、動機が八つ当たりという身勝手なものであることをあげました。
一方、有利な事情として、示談ができており被害者が許すと言っていること、家族の監督が期待できること、被告人が反省していることをあげました。

そして最後に裁判官は、この判決には控訴ができることを川上さんに説明し、閉廷しました。

判決期日は、およそ5分で終わりました。

その後
無事執行猶予となったため、相談して控訴しないことにしました。
これで、川上さんの刑事手続は終わりです。

〔トピックス〕控訴
一審で有罪の判決を受けた場合は、控訴をすることができます。
控訴は、判決の翌日から起算して14日以内に、判決をした裁判所に控訴状を提出する方法で行います。
なお、控訴すると高等裁判所での審理となりますが、高等裁判所の判決に不服がある場合は最高裁判所に上告ができます。
控訴と上告を総称して、上訴ということもあります。